Author: 道路交通問題研究会, All Rights Reserved
Date : 2004年10月28日 (更新); 2004年9月1日 (作成)
道路交通問題研究会編
はしがき
この道路交通政策史概観は、昭和年代の終末を以て終期としている。したがって、平成年代に入ってからの道路交通については第4編である程度述べている他は、体系的な歴史的記述はしていない。しかし、平成時代に入って以来の政府の道路交通の施策は、大きく転換しつつあることが窺われる。その大きな施策の転換は、平成年代に入ってから突然に生じたものではなく、長い間に積み上げられた施策、そして試行錯誤を重ねた方策の延長線上にあるものと理解する。
そのことを考えると、その新しい施策についても、何らかの形で論及しておくべきではないかということで、政策史本論の別編として、新しい政策の方向を紹介することにした。その紹介に併せて、過去の道路交通を顧みて、将来の施策を考える上での若干の意見を提示することにした。
この別編においては、第1章でモータリゼーションの初期から現在までの道路交通の変化変貌を概観し、第2章で、新しい時代に向けての道路交通の考え方の方向を、道路行政及び運輸交通行政に係るものについてはそれぞれの審議会の答申又は建議に基づいて記述し、交通警察については警察白書及び報告書に依って記述した。ただ、編者の知識不足、認識の違いなどで、正しくその内容及び方向を伝え得ているかどうかを恐れている。この章の記述については、行政担当者の厳しいご叱正を得たいと思っている。
第3章では、主として終戦以後、昭和年代の終期までの間の道路交通の回顧の中から、将来の政策の資として欲しいと考える若干の意見を提言として提示した。
第1 数字で見る道路交通の変化変貌
1 道路の状況
道路の総延長は、45年1,014,598kmに対し、平成11年1,161,844kmで、指数でいえば45年の100に対し、平成11年は115であって、30年という経過を考えると、道路総量の延びは多いとはいえない。しかし、その総量の中で顕著な現象は、高速道路の圧倒的な延長増加である。即ち、45年の638kmに対し平成11年は6,455kmで、指数では1、012となっている。即ち10倍以上の増加である。この増加は数字だけの問題ではなく、道路交通の場という観点から言えば、革命的な変貌といわなくてはならない。現代は高速道路の交通の時代に入っているというべきであろう。改良道路についても、昭和45年に対し、平成11年は指数において354となっており、この指数で見る限り、33年通達で指摘している当時の道路の不備欠陥は大巾に是正されているといってよいであろう。同じように、その通達で「歩道は僅かに大都市の一部の道路に存するのみ」と指摘し、問題提起をしている歩道も、昭和46年を100として、平成11年では817を示しており、その延長は約14万kmとなっている。この数字で見ても明らかなやうに、道路については、一方において高速自動車道及び自動車専用道の建設を進めるとともに、交通安全を目的とした道路の改善、施設の整備にも意が注がれている。とくに、道路の安全化対策については、交通安全施設等整備に関する緊急措置法の制定による効果が大きい。この法律の制定を機に、道路についての安全対策が、道路政策の一環として位置付けられることになった。
2 自動車(原付を含む)の増加傾向
33年通達では、「近時自動車の増加著しく」と書いているが、その当時はまだ、270万台(昭和34年)の程度であった。ところが、昭和45年になると、自動車総数は2,840万台と増加し、これを指数100とすると、平成11年は312、実数は8,800万台となっている。モータリゼーションを論ずる場合は、自動車の総量だけでなく、乗用車と貨物自動車の比率が問題となる。欧米流で言えばモータリゼーションということは、自家用乗用車が家庭の隅々にまで普及し、そしてレジャーや通勤やその他様々な形で利用されている状態である。その点から言えば、わが国の場合、自動車の普及は広範囲に及んでいるが、乗用車と貨物自動車の比率は、昭和46年になって、はじめて乗用車が貨物自動車を越えたのであって、それまでは引きつづいて貨物自動車が優位に立っていたのである。ところが平成11年を見ると、乗用車5,584万台に対し貨物自動車は1,836万台でその比率は3:1と圧倒的に乗用車が優位になっており、自動車の使用の中には、全くの“遊び”や暴走族の如く道路の本来の機能を悪用しているというべきものもある。
自動車の運行の状態は、走行台キロ数によって判断することになるが、昭和45年の総走行台キロを指数100とした場合、平成11年は277となっている。なお、その中で乗用車は364に対し、貨物自動車は181で、その増加の傾向を見ても、乗用車に比較すると、貨物自動車は遙かに劣勢である。
3 運転免許の状況
運転免許を保有する者の数が1,000万人という大台を超えたのは昭和35年である。昭和30年の378万人に比較して、僅か5年の間に急激に増加している。しかし、これを昭和45年を指数100とした場合は、昭和35年は41、一方、平成11年は279、その実数は7,379万人となっている。この数字から考えると、わが国においては、社会活動をしている年齢層の全員の殆どが何らかの種類の免許を保有していることになる。免許の面から見ても、近代的モータリゼーションの時代に入っているといってよいであろう。
4 交通事故による死者・傷者の状況
わが国に自動車が動くようになってから、交通事故の起こらない年はないだけでなく、年々増加の一途を辿っている。昭和20年8月の終戦以後においては、さらに、自動車の数量も次第に多くなり、交通事故の増加も急上昇している。
多発する交通事故によって死者・傷者が多く出るようになるに及んで、政府は事態を重視し、昭和30年初頭、政府内に交通事故防止対策本部を設けてこれに対応することにした。
しかし、その後の交通事故による死者・傷者の発生状況を見ると、依然として好転することなく、昭和45年には、最悪の死者16,765人、傷者981,100人を記録することになった。即ち昭和30年に比べ、死者は2.7倍、傷者は実に13倍に増加している。ところが、平成11年は死者9,006人、負傷者105万人となって、死者は大巾に減少し、負傷者は100万人を超えて漸増している。死者が減少したのは、主として安全施設緊急措置法による対策効果が昭和46年以後に出はじめたからで、とくに、昭和52年から数年間は、死者は、8,000人台にまで減少している。
この数字による交通事故の死者の減少傾向は、ある程度、事故対策の効果を示すものであるが、将来を展望して考えた場合、年間1万人の死者と100万人の傷者を出すという異常な事態が今後なお継続して恒常化することになれば、今後においては、さらなる抜本的な対策を考え、その対策を果敢に、かつ、継続して実施し、異常事態の改善解消を図ることの必要を痛感する。
5 渋滞及び公害について
交通渋滞や公害の発生という“道路交通の負の側面”といわれるものは、モータリゼーションが進展すればする程、その対策を的確に、かつ厳しく行わない限り、その状態は悪化して行くものである。昭和30年頃は渋滞ということばはまだ使われていなかったし、自動車の警笛の濫用が騒音といわれていたが、交通公害という程の問題意識はなかった。
ところが、モータリゼーションが漸く本格化しはじめた昭和30年代の後半期に入って来ると、大都市及びその周辺において交通渋滞を生ずるようになった。その理由は多々挙げることができるが、根本的には道路交通の諸条件のアンバランスに基づくものである。渋滞はそのアンバランスの中に生じているひずみ現象の一つである。本論でも詳細に述べているが、昭和36年頃から実施されはじめた大都市における交通規制は、交通渋滞を対象としたものである。昭和37年に実施された東京都心部における大型自動車等に対する都内への流入を制限する交通規制は、「このまま放置しておけば近い将来、都心部の交通はまひ状態になるおそれがある」と判断して提案されたものであった。
交通公害については、問題になっていた警笛音の濫用による騒音は、警察と市民の見事な協力によって平静化させることができたが、やがてこれに引き続いて、異質の自動車公害が発生した。即ち自動車の走行による振動又は騒音、自動車の排出する窒素酸化物等のガス、スパイクタイヤの使用による粉じんなどである。これらについては、昭和45年頃から現在に至るまで法律による規制が厳しく行われているが、今後においても、引きつづき厳しい対応を要する問題である。
第2 道路交通に係る施策の推移
主として交通事故、交通渋滞、交通公害に対する施策
1 昭和30年代の道路交通の実態は、その当時の展望では、そのままの状態で推移すれば、破局的な事態になるのではないかと考えられた程に深刻な現状認識であった。ところが、40年を経過してみると、現在もなお多くの問題は存しているとは言え、破局というような状態に至らなかったのは、この40年の経過の中で、諸々の対策が実施された結果であるといえよう。とりわけ、昭和40年代に入ってから急速に進展したエレクトロニクスと、ハード面で進歩の著しいコンピューターの導入等による各面の技術の高度化が、施策の樹立及び実施の上に、大きな影響を与えている。さらに平成期に入って、IT革命の進展によって、在来の施策とは異質とさえ考えられるような新しい施策が検討され、具体化されつつある。
さりながら、仔細に観察すると、大いなる科学化を遂げつつある道路交通についての施策にもかかわらず、なお、その実態の内奥には、昭和30年代からつづいている道路交通のひずみが解消されないまま、その原型をとどめているものが多々あることが判る。
道路交通の問題は、この長い間に累積しているひずみをどのように受けとめ、それに、どのように対処するかという問題意識からはじまらなくてはならない。
2 昭和年代後半期(昭和30年代〜昭和60年代)の対策
昭和30年頃から約30年の間は、モータリゼーションが進展し、その進展に応ずるように多くのひずみが生じ、そのひずみを原因として、交通事故、交通渋滞、交通公害が生じ、その都度、政府、各省庁も、対策を樹て、これを実施して来ている。それらの中で、ある意味でその時代において画期的な意義の認められる措置対策について、本論に述べていることと重複することになるが、ここで、敢えて重ねて述べたいと思う。
(1) 交通事故防止対策要綱の意義
昭和30年6月に決定された「交通事故防止対策要綱」の内容及び決定に至るまでの経緯は、すべて、本稿において詳しいが、この要綱の意義について、再度、確認しておきたい。
この要綱のもつ意義は、先ず、当時混沌としていた道路交通の実態、とりわけ、交通事故による死傷者の異常な増加という事実に対し、政府が、はじめて、国の重要問題として取り上げたことにある。それまで、殆ど警察取締りに一任されていたと言ってもよかった交通事故対策の問題を、関係行政省庁全体の問題として取りあげ、政府が要綱を以て方針及び具体的な施策を決定した意義は大きい。
この決定に基づいて、道路交通に関係のある省庁は、それぞれの行政分野で、提示されている施策の具体化を進めることになった。この結果、混沌としていた交通事故防止対策についての総合的実施の曙光が認められたといってよいであろう。
(2) 道路交通法の制定の意義
要綱の具体化として、立法、命令の制定、諮問及びその答申等を挙げることが出来るが、道路交通法の制定は、その中でも、特に大きな意義のあるものの一つであるということができる。
道交法の制定については、すべて、本論において詳細に論じられているが、とくにこの章において取り上げる所以は、法律の制定そのことが、道路交通の安全対策として、その時代においては、特段の意義があったからである。国政の重要問題として国会の場で、立法という形で道路交通の問題が論議されるということは、国民に対して道路交通の実態を知らせ、道路交通の安全についての認識を深めさせる機会となるものであり、その結果、国民もまた、交通安全に参加するという意識をもつ機会にもなる。端的に言って、昭和30年代前半の頃は、国民の道路交通に対する関心は薄く、悲惨なる交通事故の犠牲についても、“我関せず”、“対岸の火災”という感じであった。道路交通法の制定を機として、国民の間に道路交通に対する関心が高められたことは、当時のマス・コミの論調を見ても明らかである。
(3) 東京オリンピック開催の効果とその意義
昭和39年に、東京において、オリンピック大会が開催された。戦後はじめてわが国が開催した国際的イベントである。しかし、この大会開催については、克服しなければならない多くの問題があった。その中で、最も懸念されたのは、我が国の道路交通事情であった。4年前に行われたローマ大会の際も、欧州各国は、ローマの交通事情に懸念を表明していたが、東京の場合はローマの比ではない程に悪かった。このような道路交通事情に対し、政府及び東京都は、目標を一点に絞って、集中的にその改善方策を実施し、道路の新設改善、地下鉄及び新幹線の建設等について、7,000億余円の経費を投入した。この結果は、大会開催の時点で、東京都、とくに都心部及び其の周辺の道路交通事情を一変させる程の変貌を遂げることになった。平成の現在、東京都の交通事情が、ある程度の秩序と流れを保っているのは、このオリンピック大会開催を目標として、国及び東京都が一体となり、関係行政部門が一致して、その対策を実施した結果である。東京オリンピック大会の開催のためのこのような対策とその実施は、道路交通事情の改善についての模範的なパターンを示しているといってよいであろう。
(4) 昭和39年3月の、「交通基本問題調査会の答申」の意義
交通事故の増加、道路交通の渋滞、公害の発生等、道路交通の問題が重大化するに及んで、政府は、交通全般を対象として基本的に問題を解明して、総合的かつ基本的な政策を立案するため、交通基本問題調査会を政府内に設け、そのことに対する諮問に応じる答申を求めた。その答申が昭和39年3月に提出された。その内容と意義は、本論において、詳細に述べているが、この答申の中、「交通安全」という項目において、この調査会は在来の道路交通の対策に対する厳しい批判を述べるとともに、積極的な見解を表明している。
道路交通の安全全般に対する考え方と具体的な施策を提示したこの答申は、その後の政府各省庁の政策決定及び施策について画期的な改革を促す起爆剤になった。その後に策定された道路交通についての政策及び施策の経過を辿って見ると、このことは明らかである。しかし、この答申が真に求めている理念が道路交通に係る諸政策に浸透するのは、昭和年代の末期、平成年に入ってからである。
(5) 交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法(以下本章中、緊急措置法という)の制定の意義
前述の基本問題調査会の答申の趣旨にしたがって、道路交通のための安全施設の整備についての法律が制定された。
この法律の意義は、一つは、道路管理者と警察が、同じ道路交通という土俵に立って、同じ目標に向かって、共同して施策を実施することを定めたことであり、二つには、このための財源措置を明確に定めたことである。在来、財源不足の故に、殆ど実現し得なかった対策を警察が実施することができるようになったのは、この法律のおかげである。
そして、三つ目は、それを実施するため、年次計画を作成することを定めたことである。この結果、在来、部分的に取り上げられ、実施されていた道路交通の安全施設の整備が、総合的に継続して実施されることになった。その成果は、この法律の制定後、約10年を経て、交通事故の犠牲者の発生状況等において、顕著にあらわれている。その一例として、昭和45年度の交通事故死者16,765人、負傷者981,100人であったものが、昭和46年以降56年までに、死者は8千人台になり、傷者も50万人台に減少している。政策が当を得、施策が的確であれば、必ず、その成果は期待できるものである。
(6) 交通安全対策基本法の制定の意義
昭和45年、交通安全対策基本法が制定された。この法律も、調査会の答申の趣旨に応えて提案されたものである。この法律は、道路交通だけでなく、陸上、海上、航空の全般の交通安全に及ぶものであるが、とくに、道路交通の観点から注目すべき点は、この法律の施行の責任機関が内閣総理大臣であり、したがって施策についても政府が一体となって考え実施するものであるという点、また、国と地方公共団体の関係を明確にして、政策の決定、施策の実施について国と地方公共団体の一貫性が定められている点である。
(7) 学問的研究のはじまり
昭和30年頃は、道路交通そのもを学問的に研究対象としているものは、ごく一部を除いては皆無であった。交通心理学とか交通工学というようなことばも一般的には使用されていなかった。ところが、交通事故が増加するにしたがって、真剣に、その対策を考えると、「自動車を運転するものの心理状態」とか、「道路を歩行する歩行者及び道路の沿道に居住する住民の心情」が、交通事故と大きく係わっていることが判った。心理学の研究対象である。警察庁では、昭和32年頃に心理学者に呼びかけ、交通事故についての心理学的考察を依頼した。交通心理学という分野が開けたのはこの頃からである。同様に、精神医学の観点からも、運転者の適性について検討する必要があることが、交通事故の分析から判った。昭和40年頃から精神医学の専門家に研究を依頼し、運転免許における適性検査の参考にすることにした。しかし、この問題は人権的問題等にもからむことがあり、取り扱いについては慎重を要するので、未だ具体的な措置までには至っていない。しかし、将来の問題としては、検討を必要とするものであると編者は考える。
なお、前述のような学問的研究を促進するために、昭和34年に警察庁の付属機関として設立された科学警察研究所交通部が有効に活動した。
(8) 科学の進展と技術の高度化による交通警察機能の科学化
電子工学(エレクトロニクス)の進展と、コンピューターのハードの進歩とその導入は、わが国の産業、経済、その他各分野の業務実施の上に革命的な変化をもたらせた。
道路交通に係る交通警察の業務展開においても同様で、昭和45年頃を境として大きな進展を遂げ、そして、今日もなお、その進展を継続している。
昭和30年代前半は、道路交通の交通事故防止を含む危険防止その他の安全対策の殆どは、「警察取締り」に一任されたような形であり、また、しわよせされていた形であった。その当時の道路交通の安全を図るための施設は、信号機、道路標識、道路標示(区画線)の設置であるが、中でも信号機は現在のものに比較すれば、極めて素朴、かつ、単純なものであった。しかも、財政上の理由もあって、それらの施設の設置が十分にはできなかった。
ところが、昭和45年前後から、電子工学の進展による技術の高度化とコンピューターの積極的な導入により、交通警察の業務運営に大きな進展が見られることになった。例えば、自動車の運転免許試験の実施業務が大巾に技術的に高度化され、また運転免許証に関する業務が全国的規模で処理することができるようになった。また、情報技術の高度化により、道路交通の規制に係る業務が、その施設の整備と共に、急速に科学化された。とくに、既述の交通安全施設等の緊急措置法の実施によって、交通安全施設に要する経費が支出されるようになったことによって施設の整備の充実を促進することができた。
(9) 交通関係法令の違反事件の処理の方策について
昭和30年代前半において、すでに、道路交通関係法令の違反件数は、年間1,000万件を越すような状態になっていた。その違反について、これを正規の手続きにより処分することになると、その事務処理のために多数の人員と長い時間を必要とすることになり、関係機関のいずれも一般業務の遂行に大きな支障を生ずることになった。同時に、自動車の運転者にとっても、大きな負担であった。
そこで、この違反事件処理の簡素化を図るため、昭和29年に交通事件即決裁判手続法が制定されたが、その後も引き続いて、さらなる簡素化の措置を執るため、警察、検察、裁判の各機関の関係者の間で検討をつづけ、その結果、昭和42年に「反則行為に関する処理手続の特例」が道路交通法の一部改正として定められた。その詳細は、本論において詳しいが、この措置は、交通法令の違反事件処理としては、画期的な制度の創設というべきものである。しかも、この制度の創設について警察庁、検察庁、裁判所のそれぞれの機関が、行政、司法の所管業務の枠を越えて、大局的な観点から実態を凝視して、この制度の創設に意見を一致させてその実現を図ったという事実は、高く評価してよいことではないかと思う。この制度の実施により、爾来、違反事件の80%が反則処分として処理されている。
この章で述べる「新しい時代に向けての政策」は、現在、政府及び道路交通に係わる省庁において、検討され、または、実施されている政策である。その政策については、主として道路交通における交通事故、交通渋滞、交通公害等に、如何なる考え方で、如何なる対策を以て対処しようとしているかということを中心として叙述することにしている。
蓋し、21世紀の初頭においては、年間1万人の死者、100万人の負傷者の出るということが恒常化している状態、交通渋滞が日常化しそのため金額にして年間10数兆円の損失が出ている状態、騒音と大気汚染で環境悪化が進行しつづけている状態、こういうことが、道路交通の現実である限り、何を措いても、早急に、果断な決意を以て、この状態の改善、解消に当たらなければならないからである。
その叙述に当たっては、専ら各省庁で公表されている資料に基づいて、その政策の考え方等を紹介するという立場で述べることとしている。
第一節の序論では、現在の政策が考えられるに至るまでの道路交通の状態の推移とそれに対しての対策等について、編者の知識に基づいて、編者の立場で記述した。したがって、この点については、現に政策を考え、かつ推進している関係行政機関の方とは、認識を異にしているところがあるかも知れない。
第2節以下においては、道路、運輸交通、交通警察のそれぞれを、その所管としている省庁の、道路交通に係わる分野における政策について、公表されている資料に基づいて、記述することにした。
道路については建設省の道路審議会の答申及び建議を、運輸交通については運輸省の運輸政策審議会の答申を、交通警察については、警察白書及び道路交通の現状及び対策を参考資料として、できる限り、正確に記述したつもりである。
第1節 序 論
第1 道路交通についての対策は、戦後50余年の間に、その時々の道路交通の状態に対応して、法令の制定、行政上の措置等により執られているが、経過的に見ると、昭和45年前後が、道路交通の政策について、一つの転機になっていると言ってよいように思われる。
昭和45年頃から、政府及び道路交通に係る省庁が、交通事故、交通渋滞、交通公害という道路交通の“負の側面”(運輸政策審議会の答申の中で用いられている用語)を取り上げて、それぞれの所管行政の中で、対策の対象として考えるようになり、そのことについての法令上の措置なども定めるようになった。このようになったことについては、前節で述べているように、昭和39年3月の交通基本問題調査会の答申が大きく作用しているように思う。
しかしながら、大観すれば、尚“負の側面”に対する対策は“併せてこれを行う”というどちらかといえば二次的な考え方であり、政策の重点は、依然として当時の経済の要請に応えたものである。道路については、「輸送需要の増大に対処するため、輸送能力の拡大を図る」という方針の下で、具体的には、高速自動車国道等の高規格の道路による道路網の整備充実に重点が置かれていた。同じように運輸政策においても「輸送需要に対する輸送力の確保」ということが基本的な方針であった。交通警察は、本来、交通事故の防止、交通の円滑、交通公害の防止ということが、その責務である。交通安全対策基本法に基づく交通安全基本計画、交通安全施設等整備事業に関する緊急措置法に基づく交通安全施設等整備事業計画等による施策をその担当する分野で、積極的に推進し、また、交通警察の運営の合理化と効率化を図るため、装備及び施設の科学化を推進している。しかし、交通警察の場合は、日常業務として道路交通の現場で、日々発生している“負の側面”に対決しているだけに、この時代には、いろいろな意味で、欲求不満と焦燥感というものがあったのではないかと推察する。
第2 昭和60年代から平成時代に入るに及んで、一方で、経済情勢の変化により輸送需要が頭打ちになり、他方、道路交通の“負の側面”は、益々深刻な状態になってきた。交通事故の犠牲者は、警察をはじめ、関係行政機関の努力により、その増加を抑止しているとは言え、なお深刻な状態に変わりなく、近年は、高齢者の犠牲が増加し、その死亡者は、総数の1/3以上を占めるようになり、交通事故発生の新しい傾向を顕著に示すようになった。
その状況を見ると、平成12年の統計によると、65歳以上の者の死亡は3,166人で、全死亡者の34.9%となっている。さらに、その中で、自動車、オートバイ、原付に乗車中(運転又は乗車)に死亡したものが1,073人に達している。因みに、近年において死亡事故の最も少なかった昭和54年は、全死亡者は、8,466人、その中、65歳以上の者は2,213人で、その比率は26%である。さらに、高齢者の死亡者中、自動車に乗車中の者は、133人である。高齢者の死亡について、昭和54年と平成12年を比較すると、平成12年は、死亡者総数で2.2倍、自動車等の乗車中では実に11倍強になっている。このような交通事故の発生の態容は、高齢者の社会活動が近年において、頓に増加している結果を示すものであり、社会生活の態容が大きく変貌しつつあることを明らかにしている。このところ、わが国の高齢者対策は最も重要な国政上の課題であるが、交通事故対策もまたその一環として論じられるべき重要なものである。
交通渋滞は、往年は、主として都市内の交差点周辺において起こっているか、又は交差点の構造を原因として起こっている例が多かったが、近年は高速自動車道等の幹線道路に渋滞が起こり、それが恒常化するようになってきた。建設省(当時)の平成10年の資料によると、交通渋滞の結果、その時間の損失は年間、国民一人当たり約42時間となり、金額に換算すると、年額12兆円になるという。大都市の主要道路、自動車専用道(東京における首都高速道路、阪神地区における阪神高速道路)等の現状は、渋滞していることが交通の常態であるというようになっている。東京都では、交通渋滞によって平均時速18kmでしか走行できないため、年間4兆9000億円の経済損失があるという。(国際交通安全学会のシンポジウムでの東京都副知事の報告)
交通渋滞の実情は、最早、部分的、一時的な措置では対処し切れない程に深刻なものであり、前述のように、明らかな膨大な経済損失を伴っていることを考えると、渋滞が生ずる構造的原因を厳しく解明して、根本的な対策を考えなければならない。
交通公害は、環境公害の中でも、直接的に国民の日常生活に影響する深刻な問題になってきている。自動車の走行騒音、振動音、排気ガスは、道路の沿道の居住者にとっては日常生活に対する脅威である。
高速自動車道の沿道の騒音等については、いろいろな地域で交通公害に対する陳情抗議は数え切れない程に多い。
前述の東京都副知事の報告によると、東京都内で、NOXの排出量のうち64%が自動車によるものであり、さらに粒子状物質(PM)は36%が自動車によるもので、さらに道路の粉じんの巻き上げを合わせると、自動車の運行が原因となる粒子状物質は全体の82%になるという。今や交通公害は、国民の日常生活に最も近いところで起こっている深刻な環境の問題である。
以上述べたような最近における“負の側面”の問題は、モータリゼーションの進展に伴うやむを得ぬ事態であるというような認識では許されないものである。従来の施策の対応ぶりを率直に見て、これを人体に例えていえば次のようなことになろうか。傷口ができた。とりあえず、こう薬を貼って治療する。また傷口がいたみ、さらに大きくなった。再びこう薬を貼る。こういうことを繰り返している中に、その傷が致命傷にまでなった。こう薬を全部はいで見ると、まさに重症である。
経済発展優先の政策が、わが国のモータリゼーションの急発展を促したが、その間に、道路交通の上にひずみを生じた。そのひずみを是正することのないまま、そのひずみが原因となって、さらに大きなひずみが生じ、それらが累積した中から“負の側面”は益々深刻になっていったのである。
“負の側面”をこのように見てくると、それは、側面ではなく、道路交通の正面であり、正面に立ちはだかっている問題である。このような“負の側面”にどのように対応するかということは、道路の政策においても、運輸交通の政策においても、その正面に据えて検討しなければならない課題になっているのではないだろうか。
第3 21世紀という新しい世紀に臨むに当たって政府も関係省庁も、それぞれの立場で、それぞれの観点に立って、所管行政の中の道路交通に係わる問題について検討し、新しい時代にふさわしい政策の策定につとめた。その過程において、政府は関係閣僚会議で審議し、関係省庁は、それぞれの審議会に諮問して意見を求めたが、その間に、わが国の経済情勢の上で大きな変化が起こり、その結果は道路政策、運輸政策にもその影響が及ぶことになり、他方、益々深刻になって来ている交通渋滞、交通公害、そして少子高齢化の問題等への対処など、道路交通をめぐって、それぞれの政策において、思想の転換を含む根本的な改革が要請されることになった。
このような政策の検討について、とりわけ、平成年に入ってからの各般の技術の高度化により、道路交通の実態の調査分析の上で、従来に比べると特段に精度が高くなって来た。さらにIT(情報技術)革命が進行して、産業構造においても、生活様式においても大きな変革を招来した。道路交通を考える上でも、このIT革命の影響を大きく受け、対策の上に革命的な変革をもたらすことになった。かくて、道路交通に係る政府、各省庁の政策は、21世紀を展望して大きく、発展的転換を図ろうとしている。
第2節 「新時代の姿を求めて」と「道路政策変革への提言」 −道路行政について−
第1 21世紀を展望して策定される道路政策について、道路審議会の二つの答申及び建議が極めて重要な意義をもっていると考えられる。平成6年11月建設大臣に答申された「21世紀に向けた新たな道路構造のあり方−新時代の道の姿を求めて−」と平成9年6月に提出された建議「道路政策変革への提言」である。
この二つの答申又は建議は、その後における道路政策の考え方に大きな影響を与え、恐らく、その後に作られた道路整備5ヶ年計画の基本的な内容となっているものと考える。
そこで、この項では、二つの答申又は建議の意義を述べて、新しい時代に対応する道路政策についての考え方、政策の展開の方向を知る縁(よすが)としたい。
第2 「新時代の道の姿を求めて」の意義
建設大臣は「21世紀に向けた新たなる道路構造のあり方」について道路審議会に諮問して、その意見を求めた。この諮問は、経済構造・社会構造の大きく変転している中において、道路の機能、道路のあり方等について、根本的に検討する必要を認めて、諮問したのであり、この答申は、その諮問に答えて、新しい時代における道の姿という形でその答申を行った。以下答申にしたがって、要点を述べることにする。
1 道づくりには、思想がある。わが国の長い歴史の過程の中で、道づくりについての思想の変遷は、明らかである。今、21世紀に向けて、道づくりを考えるに当たっては、従来の道づくりの思想の転換を必然とする。答申の中の「21世紀に向けた新たな道路構造のあり方」の項において今までの経済、社会の条件と違って、新しく迎えようとしている時代においては、道路づくりについて、思想の転換が必要であると指摘し、従来のモビリティ重視の画一的な道路づくりから「一般国道のような地域と地域を結ぶ道路では、自動車が安全に、かつ、相当の速度で走行でき、また、地区内道路では自動車よりも、むしろ歩行者や自転車が安全に、安心して通行できるような」道路づくりに発想の転換−思想の転換−を図ることを述べている。一読すれば、至極当然のように思われるが、長く道路交通に係わって来た者の眼には、「大きな思想の転換」の提唱と受け取ることができる。
道路づくりの思想の転換によって、道路計画についても、発想の転換を考えることになる。答申は、道路の機能について、従来のどちらかといえば画一的に考えられていたものを、多様な機能という観点に立って、その多様な機能に応じた道路づくりを行うことを提唱している。即ち「モビリティだけでなく、総合的なユーティリティ重視の道づくり」「画一的な道づくり」から「個性ある多様な道づくり」、「地域が自由な発想でできる道づり」など、道路構造のあり方についての提言である。
2 答申の提言は、概括的に言えば、次のようなものである。「新たな道路計画体系の確立」という提言は、「それぞれの道路のもつべき主たる機能を明確にして道路網を再編成し、新たな道路網体系を模索すること」である。次に「モビリティの確保」という提言である。その提言の内容の中、とくに、注目してよいことは、従来から施策の対象として取り上げられていた交通の安全、渋滞等に対する対策を、今回の答申で道路の機能という観点に立って、道路づくりの基本的な考え方の下の施策であることを明示したことである。
渋滞の緩和の方策、安全の確保についての方策、公共交通の利便性の向上のための方策等について、具体的な施策の方向を明らかに示している。次に「人間の復権、高齢者、障害者のための道づくりの展開」という提言は、もう一つの提言「魅力あるまちづくり、地域づくりの展開」と共に道路づくりの思想の中に、人の交通、人の道路利用、そして人の住まい、人の日常生活というような、人に関することを大きく取り込んでいる。ここでも道路づくりの思想の転換を思う。
3 「新時代の道の姿を求めて」という答申の提言は、もとより、上記だけでなく、広範囲にわたって、具体的な施策の方向と措置内容を述べて多様な面に及んでいるが、この提言の大きな意義は、極めて端的に、在来の道路づくりについての考え方(思想)の転換を提案し、その転換を確実に実現する方策を示したことにある。
個人的な所見になるが、長年にわたって、道路交通問題を考え、そのことに対処してきた編者は、この提言にはじめて接したとき、「道路交通の夜が明けた」という感激を味わったことを述べておきたい。
第3 「道路政策変革への提言」−より高い社会的価値をめざして−の意義
1 平成6年6月に、前項で記述した答申が行われたが、それに引きつづくようにして、平成9年6月に標題の建議が道路審議会から、建設大臣に対して行われた。この建議に至る過程について、「グローバリゼーションの進展、少子高齢化社会への移行、環境・エネルギー問題の深刻化、高度情報化・技術革新等の進展という大きな潮流の変化の中で、わが国は大きな転換にさしかかっている。このような状況の中で、新しい時代を実現するために、社会経済システムの抜本的な変革が求められており、財政改革等諸々の改革が検討されている。国民生活に密接に関連し、経済生活を支えている道路は、この変革に対応して、社会で果たすべき役割と機能の見直しを進め、21世紀型のシステムを率先して作り上げるべきである。そこで、道路審議会は、21世紀に向けて、基本的な考え方の大胆な変革とその具体的な方法について検討を進めてきた。」
その検討については、国民参加型の新しい方式を取り入れ、国民との対話による意見をその内容に取り入れた。この建議は、このような検討の過程を経て、道路審議会の審議を経て、建設大臣に建議された。」(道路審議会会長のことばの抄)
2 この建議は、その提言について概略次のような基本的な考え方を述べている。
「この提言では、21世紀を展望しつつ、道路政策を原点から見直すこととし、道路の役割の再確認と国民との対話により、これまでの道路政策の評価を行い、今後の道路政策のめざすべき方向を示した」と述べている。ついで、「今回の提言は、21世紀に求められる新しい政策像を具体化したものであり、特に次の点は新しい考え方である」として、次の3点を述べている。@道路審議会としては、はじめて、国民と徹底した対話を行う国民参加型の新しい方法を取り入れた。A道路政策の基本的考え方を「供給量から社会的価値へ」と転換し、「戦略的施策展開」の方法を提示した。B「評価システムの導入」等による効率的で透明な政策の進め方を提言した。そして、最後に「道路審議会は、道路行政はもとより関連する機関や国民に対しても、この提言の実現に向けての意識改革と努力を求めるものである」と結んでいる。
3 この建議の中で、「道路政策のめざすべき方向」という項目を設けて基本的な考え方として、「供給量から社会的価値へ」めざす方向として三つの方針と八つのサービス目標を述べている。
@ 基本的考え方について、「道路政策の評価のモノサシを“供給量”から“国民生活や経済活動にとっての価値”(社会的価値)へ転換するとともに、これに伴い政策方針と具体的な目標を見直すことが必要である。その際には、21世紀のビジョンである“個性が活きる、活力ある効率的な社会経済”、“便利でゆとりある質の高い生活環境”、“技術を活かした、環境と共生する新しいライフスタイル”をふまえた方針を設定して国民に判り易く示すべきである。」と述べている。
A めざすべき方向−三つの方針と八つのサービス目標−として次のように述べている。
方針1 経済構造を改革し、活力ある社会・経済を形成するため社会活動の効率性を高める。評価のモノサシを「道路延長を伸ばす」から「移動の効率性を高める」に転換する。
この方針の下でサービス目標として“広域交通の確保”“地域自立の支援”“渋滞の緩和”“都市の再生再構築”という四つのものを掲げている。
方針2 質の高い生活環境を形成するため、地域や都市における社会の共有空間としての機能を高める。
評価のモノサシを“車の利便性を高める”から“人(ドライバーを含む)の満足度を高める”と転換する。
この方針の下で、“交通安全の確保”“信頼性の高い道路空間の確保”という二つの目標を設定する。
方針3 環境保全や情報科学の新しい分野に貢献する。
この方針の下で、“環境の保全・向上”“高度情報通信社会への支援”の二つの目標を設定する。
以上が、この建議が提言している方針と目標の概要であるが、この建議は、これら方針及び目標を中心にして、更に詳細にその具体的な内容及びその実施の方策を記述している。
4 この建議の意義を考察すると、@道路政策を原点から見直して、今後のめざすべき方向を示したこと、Aその転換すべき政策内容を定めるについては、広く、深く、国民の意見を聞き、その見解を政策の中に積極的に取り入れること、B政策の展開については、その手法として戦略的施策展開の考え方を導入していることなど、在来の答申とは異なる新しい発想をまじえた画期的なものであり、今後におけるひとり、道路政策に限らず、一般的に政策決定の手法として、参考となるものであろう。
第3節 「クルマ社会からの脱皮」 −運輸行政について−
第1 標題は平成12年10月運輸大臣に対し、運輸政策審議会から提出された“21世紀初頭における総合的な交通政策の基本的な方向について”という答申の中の第3章 重点課題に関する考え方の中の題名の一つである。
この答申は運輸交通行政の全般に亘っての政策について述べているが、本節では、その中の主として自動車交通に係る政策に関するものを摘出して、その政策の考え方と施策の方向について、答申文をそのまま引用して記述する。
そのこともあって、標題を「クルマ社会からの脱皮」とした。
第2 交通政策の基本目標
約20年前の審議会の答申の中で「交通政策の究極の目標は人と物との円滑なるモビリティを確保して経済の発展と国民生活の向上に資することにある」と述べている。このような「モビリティ確保」という表現を用いたのは、経済事情は、すでに安定成長へ移行していたが、なおかつ、交通需要の着実な伸びが予想されると共に、これに対応するための輸送力の確保が依然として重要な課題であった当時の状況を反映したものである。
しかし、現在は、事情が大きく変わり、「輸送力の確保」ということが交通政策に占める比重は縮小し、これに対して「移動の快適性、輸送の効率性、環境との調和の確保や安全性の向上というような交通の質的側面の向上に対する要請が格段にその重みを増している。さらに、交通の改善が、交通需要の発生の背景となる経済社会のあり方そのものに影響を与え、それがまた交通需要の変化につながるというダイナミックな捉え方が重要である。
以上のような理由から「経済社会の変革に対応するとともに変革を促すモビリティの革新」ということを基本方針として提言する。
以上が提示された基本方針の概要であるが、さらに要約すれば「交通に対する諸々の客観的条件の変化に対応して交通の質的側面の向上を図る」ということであろう。
その質的側面の向上の一環として、重点的に取り組むべきものとして自動車交通を取り上げ「クルマ社会からの脱皮」というテーマを掲げて、このことに係わる提言を行っている。
第3 「クルマ社会からの脱皮」
自動車は、その利便性の高さによって、旅客交通、物流交通の両分野で急速に利用が進み、国民生活や経済の諸活動にとって不可欠の存在となり、いわゆるクルマ社会が形成されている。
自動車は、今後とも、わが国の交通システムの主役としてますます重要な役割を担うことになる。しかし、自動車の利用には、環境問題、交通事故、道路交通混雑といった「負の側面」が伴う。これまで、このような負の側面に対し、根本的な対策がなされないままに、自動車の利用が進んで来たが、「経済優先」ということから「生活の豊かさ」を重視する時代を迎える今、このようなクルマ社会に、これ以上、手を拱いていることは許されない。このためには、自動車交通の負の側面の是正策を果敢に講じることにより、安心感がある新しい交通システムを実現すること、即ちクルマ社会からの脱皮が必要である。
そこで、そのための対策の考え方について以下の提言を行う。
(この項では、それらの提言の中、要点を摘記することにする)
(1) 都市と交通の改造について。都市政策と交通政策の連繋。
都市と交通は相互に密接に関連しており、交通は都市を形作る主要な要素であるが、また、都市の構造によってそのあり方を規定されるものである。したがって、都市と交通は両者の整合性を確保しつつ一体的に整備されなくてはならない。このため、都市政策と交通政策は連携して「都市と交通の改造」を推進し、自動車に過度に依存しない都市と交通を実現する必要がある。
(2) 自動車交通のグリーン化 −公害対策の将来−
自動車から排出されるCO2、NOX、粒子状物質(PM)等の公害を削減するための交通システムの転換を必要とする。このため、特に大きな効果が期待される自動車単体の対策の強化を図るとともに「都市と交通の改造」等による環境負荷の少ない交通システムの実現に取り組むべきである。
自動車の騒音対策については、一層きめ細かい騒音源対策や騒音低減装置の性能維持対策を進めるとともに道路構造対策、交通流対策も含めた総合対策として推進する必要がある。
(3) 自動車交通の安全性の向上
21世紀初頭の国民生活の脅威とも言うべき「新たなる交通戦争」の拡大を防ぐため、様々な角度から交通事故の情報を分析し、その背後にある要因を解明するとともに、先進技術を駆使しながら、従来は技術的に困難であった分野においても対策を推進することなどにより、自動車交通安全対策の強化を図る必要がある。その方策としてITの発達により実現可能性の大きく拡大している「事故未然防止対策」の分野での対策の強化を図ることである。
また、予防対策として、人と車の通行分離を図るため歩道や自転車道の整備も必要である。
次に事故が発生した場合の被害軽減対策の分野において、乗員を保護するための車両構造対策とともに、衝突した場合、相手方の安全を図るための対策も必要である。
(4) 以上のほか、自動車交通サービスの多様化として、大量輸送機関を利用し難い分野において、需要にきめ細かく対応できる新しい自動車交通サービスの展開を図る必要があること、観光地の交通の円滑化として、マイカーの集中的な乗り入れによる道路交通混雑、環境問題が発生している観光地について、個別の事情に応じた交通の円滑化等の対策を検討する必要があること等が提言されている。
(付言)
新しい時代に向かっての運輸交通対策を述べるには、この答申のほか、多くの資料を参考にすべきであるが、この節では、答申の中の一部についてのみ引用して述べているので、果たして、新しい政策の方向を正しく伝え得ているかどうかを懸念している。読者におかれては、是非とも、平成12年10月の答申の全文及び運輸政策審議会自動車交通部会で審議された部会答申等を参考にして頂きたい。
第4節 安全、円滑、快適な 交通を目指して −交通警察行政について−
第1 道路における交通事故、交通渋滞、自動車公害等は、モータリゼーションの進展とともに、その深刻度を増し、現在では、道路交通において対策を必要とする最も重要な問題となっている。従来、これらの問題は、専ら交通警察の所掌であるように考えられてきたが、これに対する対策は、道路交通に係わるすべての機関が、それぞれの行政の中で取り上げるべきものであった。交通事故による死亡者負傷者が増加し、交通渋滞が日常化し、自動車の公害が住民の日常生活の脅威となるようになってくると、一方においては、交通警察の権限の範囲内では、その対策に限界があり、他方においては、関係行政機関がそれぞれの行政の範囲内で考えねばならぬことが多々あることが明らかになってきた。即ち、このような道路交通上の問題については、その因って起こる原因を明らかにして、それに対処する積極策と、出現している状態に対処して当面これを是正し処理する消極策の両者を総合して、同時に実施することが強く要請されているというべきであろう。
第2 交通警察の新たなる展開
1 この節の題名「安全、円滑、快適な交通を目指して」は平成13年に発行された「道路交通の現状と対策」(警察庁交通局)という報告書に付されたサブタイトルの名称である。このサブタイトルに示されている題名は、現在における交通警察の目指している方向であるとともに、新しい世紀に臨んで、交通警察のあり方として、警察の責務の範囲内ではあるが、消極的な「取締り」という考え方から、「安全、円滑、快適な道路交通の実現を目指す」という積極的な考え方に立つた「取締り」に進展すべきということを明らかにしたものと思料する。このような考え方の進展の動機になったのは、近年における道路交通に関係の深い技術の高度な進展と、情報通信技術(IT)による産業・社会構造の変革(IT革命)である。警察庁は、平成13年に発表した警察白書の中の交通警察の章において、「安全かつ快適な交通の確保」という題名の下に「交通警察の新たなる展開」として、今後における交通警察の展開の方向と対策の概要を述べている。前記の報告書及びこの白書に述べているものの中からその一部を摘記して、「安全円滑快適な道路交通を目指して」展開しようとしている交通警察の政策の概要を述べることにする。
2 IT革命と交通警察 ITS構想による交通警察の展開
(1) 平成7年2月政府は、「高度情報通信社会推進に向けた基本方針」を決定した。この決定において、「公共分野の情報化等」という分野において、その一つとして「道路、交通、車両の情報化」を挙げ、この基本方針に基づいて、ITSの構築を目指すことにした。関係省庁である警察庁、通産省、運輸省、郵政省、建設省の5省庁が「道路、交通、車両分野における情報化実施方針」を決定し、平成8年7月「高度道路交通システム(ITS)推進に関する全体構想」をとりまとめた。
(2) ITS(Intelligent TransportSystem 高度道路交通システム)とは、最先端の情報通信技術等を用いて人と道路と車両とを一体のシステムとして構築することにより、交通管理の最適化等を図り、道路交通の安全性、輸送効率、快適性の向上を実現するとともに、渋滞の軽減等の交通の円滑化を通じ、環境保全に寄与する等、真に豊かで活力ある国民生活の実現に資するシステムであるとされている。
(3) ITSの実現については、関係各省庁が、それぞれの分野で、研究開発、さらに実施ということで方策を進めている。
警察は、その任務から考えて、ITS構想については、その関与する分野が広く、その実現に向けて積極的に活動を展開する方針の下に、概ね以下に叙述するような各種システムの推進を図っている。
@ 新交通管理システム(UTMS)の 推進
このUTMSは、光ビーコンを用いた個々の車両と、交通警察が管理運用している交通管制システムとの双方向通信により、ドライバーに対してリアルタイムの交通情報を提供するとともに、交通の流れを積極的に管理し、「安全快適にして、環境にやさしい交通社会」の実現を目指しているシステムである。
A 高度交通管理システム(ITCS)
ITCSは、前記のUTMSの中核となるものであり、従来、交通警察において整備充実を進めて来ている交通管制システムをさらに高度化しようとするものであり、その整備の一環として管制センターの中央装置の高度化を計画的にすすめている。
B 交通情報提供システム(AMIS)の推進
AMISは、UTMSのサブシステムの一つであり、ドライバー等に対して渋滞、事故、工事、目的地までの所要時間等の情報を様々なメディアを通してリアルタイムに提供することにより、交通流の自律的な分散、渋滞の緩和、ドライバーの心理状態の改善(イライラの解消)等を図るシステムである。このシステムを実現するための一つのシステムとして「道路交通情報通信システム(VICS)」が、警察庁、郵政省(当時)、建設省(当時)の三省庁の共同作業で実用化され、自動車に取り付けられているカーナビゲーション装置等に直接情報を提供する活動が行われている。
C 公共車両優先システム(PTPS)の推進
公共輸送機関としてのバスの優先通行を確保するため、信号制御、バスレーンの優先を確保するための交通規制等の措置を円滑に実施するためのシステムである。
D 以上のほか、車両運行管理システム(MOSS)、緊急通報システム(HELP)等が、UTMSのサブシステムとして推進されている。
(4) 以上述べたところは、何れも、ITS構想の下において交通警察が推進しているシステムの概要である。そしてまた、21世紀を展望した交通警察のあり方、取締り方策の基本的な考え方を示すものである。
3 バリアフリー社会の実現
高齢者が増加し、高齢者が社会活動をする機会が多くなっている。身体障害者の社会活動も、巾広く、かつ、多くなっている。このような高齢者等の社会生活の安全と快適化を推進することは、現時点における急務となっていることである。交通警察としては、関係の各機関と密接に連携して、道路交通の上の対策を推進することにしている。
@ 高齢者等(身体に障害のある人を含む)が安心して通行できる空間を作り出すため、高齢者が利用する施設の周辺等を中心として、各般の交通規制を組み合わせたシルバーゾーン等の設置、道路管理者による施策と組み合わせた住居地区の安全化を図ったコミュニティ道路の形成を推進する。
A 信号機の高度化を図って、高齢者等の歩行に対応して、その合図により、時間の調節をはかるような機能を備えるようにするほか、道路標識、道路標示の大型化等の措置を講じる。
B ITS構想の一環として、歩行者等支援情報通信(PICS)の推進によって、歩行者の安全で快適な通行を支援する。
4 環境問題への対応 −交通公害対策−
交通公害の主なるものは、自動車の走行による騒音、自動車の走行によって排出されるNOX、粒子状物質等による大気汚染である。このような公害に対し、警察対策としては、道路上における取締りのほかに、交通公害の状況に応じた交通情報の提供や信号制御等を行うための「交通公害低減システム(EPMS)」を推進することと、他の交通関係機関と協力して、交通需要そのものを調整して交通量の低減を図る交通需要マネージメント(TDM)方策を積極的に推進する。このTDMは、道路及び運輸交通の施策においても、交通量の削減を含む調整ということで、多角的に運用されようとしている。
5 国際化への対応
道路交通は本来、国内行政の範囲にあるものであり、国際化ということについては、極めて浅い歴史しかない。昭和30年代後半に入った頃、国際運転免許証が問題となり、昭和39年に道路交通法に国際運転免許に関することを定めたのが、交通警察としては、国際化のはじまりである。
(1) ITSの国際化への対応
平成時代に入って、わが国のITS構想の研究開発が進められたが、日米欧の各国は、あるいは連携し、あるいは競争しつつ、国際的規模の研究開発を進めている。
ITSに関する国際会議が平成6年以降毎年、欧州地域、アジア太平洋地域及びアメリカ地域で持ち回りで開催され、わが国もこれに積極的に参加し、とくに、交通警察は、多数の関係者を派遣して、研究発表などを行っている。
(2) 国際化に対応した運転免許行政
国際的な人的交流が活発化するに伴って、自動車の運転についての国際問題も多くなって来ている。わが国から国外へ出国するものに対する国外運転免許証の交付も年々増加の傾向にあり、それに対応して事務処理の迅速化、合理化を図る必要があり、また、逆にわが国に流入する外国人に対する運転免許事務も増加しており、これに対応する事務の合理化、迅速化も必要である。一方、国際化の進展に伴い、真正でない外国の運転免許証を使用して、不正にわが国の免許証を取得しようとする悪質な事案も発生している。これら運転免許をめぐる国際的な不正行為、犯罪等が今後も増加するおそれがあり、これに対する対応が必要となっている。
第3 安全、円滑、快適な交通の実現のための主たる対策
1 交通秩序の確保のための方策
(1) 道路交通の秩序の確保ということは、交通警察の表看板である。長い経験の集積と、時代の変化、人心の動向への対応を併せ考えて、違反行為の未然の防止、危険度の高い悪質な運転、住民からの要望を反映して迷惑性の高い運転に重点を置いて取締りを行う。悪質な運転とは、無免許、飲酒、著しい速度超過、信号無視等の運転で、統計的にも交通事故に最も直結し易いものである。
住民から取締りの高い迷惑運転の中には、住宅地域を暴走する所謂暴走族の運転も含まれている。
(2) 迅速・適正な交通事故・事件の捜査活動の推進
一般国民は交通事故・事件の処理について、被害者の立場から、その処理の適正化を強く要望している。とくに、一方の当事者が死亡又は重体等のため事情聴取ができない場合、また、両者の言い分に相違があるような場合には、後日、いろいろな問題を残す可能性があるので、事故原因の解明については、とりわけ、慎重かつ、適正を期することが重要なことである。
交通事故の処理については、その現場の交通流の渋滞についての早期解消の要望が強い。このため、実況見分を効率的に行うことのできるデジタル画像測量システム等の活用とか、軽微な物件事故にについては、現場見分を省略する制度の積極的な運用を行う。
(3) 暴走族に対する対策
暴走族の実態と動向は、単に道路の上を暴走するということにとどまらぬ複雑な背景をもっている。その暴走の態容は、道路上を大集団で行動する形は減少しているが、小規模集団が合同暴走をしたり連合組織を形成し、それらが悪質な刑法犯を冒し、また、暴走族組織の対立によって、殺人、傷害致死などの事件を起こしている。その活動範囲を数府県に広げ、暴走の広域化も行われている。
暴走族の年齢構成は、共同危険型の暴走族と見られる約2万3千人の中、少年が75%を占めており、青少年問題としても重要なものである。
このような暴走族に対する対策は、もとより徹底した取締りであるが、暴走族に加入することを事前に阻止するための措置がとられなければならない。中、高の学校、関係団体、さらに家庭等と緊密な連携を保って、未然に防止する対策を進める必要がある。
2 道路交通の円滑化対策 −交通渋滞の問題−
道路交通における渋滞の問題は、交通警察の任務の範囲を越えて、道路行政、運輸交通行政と緊密な連携の下に、総合的な対策を以て臨むべきものである。その総合対策は、渋滞の生ずる原因を解明して、それぞれの担当する行政分野で「何をなすべきか」を定め、それらの方策を総合して同時に併行して実施することである。
そのような渋滞解消、交通の円滑化の推進の方策として、交通需要マネージメント(TDM)の手法が注目されている。
道路交通の実情を考察すると、最早、交通需要の増加に対応して、道路容量の拡大を図ることは困難であり、したがって、交通需要そのものを軽減し、又は平準化することを考えねばならない。そのような交通需要を如何なる手段で調整するかということがTDMである。
今後、警察、道路、運輸交通それぞれの行政の立場から、交通需要の調整方策を検討して、TDMの手法によって、総合対策を推進することが重要になるであろう。
3 総合的な駐車対策の推進
違法駐車は、幹線道路における交通渋滞を悪化させる要因となるだけでなく、歩行者の通行の障害にもなり、また、住居地域、商店街地域等でも住民の生活環境を害する大きな原因になっている。
このような違法駐車に対する対策のみでなく、自動車等車両の駐車問題全体について、総合的な対策を考える必要がある。駐車問題は都市の盛衰にかかわる重大事であることは、今や近代国家の共通の見解である。
駐車問題については、従来、違法駐車は専ら警察取締りに依存してきているが、実情を見れば極めて明らかなように、取締りだけでは到底対応できるような状態ではない。根本的な対策が必要である。
4 交通安全教育及び広報啓発活動の推進
(1) 交通安全教育は、世界中共通の道路交通の安全対策の根幹となっているものである。交通事故は、人によって起こされ、人に対して被害を与えるものであり、その人が運転者であれ、歩行者であれ、その人のあり方如何にかかっているものである。その意味から、交通安全教育は、最も重要な道路交通対策である。
(2) 国家公安委員会は、「交通安全教育指針」を作成し、市町村、民間団体等が効果的かつ適切に交通安全教育を行い得るような指針を公表した。この指針を活用し、幼児から成人に至るまで、段階的かつ体系的に交通安全教育を行うとともに、さらに、社会活動に参加している高齢者の安全を確保する観点から高齢者に対する交通安全教育を推進している。
(3) 交通安全教育、普及啓発活動を行うに当たっては、参加、体験、実践型の教育方法を積極的に取り入れるとともに、教材の充実及び実施主体間の相互利用の促進を図るなどして、国民が自分から納得して安全な交通行動が出来るよう、必要な情報を分かりやすく提供することにつとめている。
安全教育、普及啓発活動については、国、地方公共団体、警察、学校、関係民間団体及び家庭が、それぞれの特性をいかし、互いに連携しながら地域ぐるみの活動が進展されるよう行われている。とくに、地域における民間の指導者を育成することにより、地域の実情に即した主体的な活動を促進している。
第2 政策策定の考え方についての提言
(国としての政策に盛り込むべきもの)
(1) 政策の対象を明確にすること
(2) 政策の目標を明らかにすること
@人命の尊重の徹底
A交通渋滞の解明と解消
B環境との調和
(3) 政策の実施方策の基本を明らかにすること
@総合的な効果を発揮するための施策の調整
A対策の実施の確保と効果の評定
B道路交通の対策の実施のための財政措置の問題
第3 交通警察についての提言
(1) 交通警察の運営についての考え方を明確にすること
(2) 第一線の交通警察官の養成と確保について
(3) 交通安全教育と交通安全運動について
(4) 運転免許制度について
詳細はこちら.
警察白書(平成13年版) 警察庁
道路交通の現状と対策(平成11年〜13年版) 警察庁
警察によるITSの推進(平成11年) 警察庁
交通安全白書(平成13年版) 内閣府編
交通安全対策実務必携(平成11年) 総理府
道路交通の現状と対策(平成13年) 警察庁
道路審議会基本政策部会中間とりまとめ(平成9年)
総合的な交通政策の基本的方向について(平成12年運輸政策審議会答申)
ITSハンドブック(建設省監修)
新道路整備5ヶ年計画(平成9〜14年)
21世紀に向けた新たな道路措置のあり方(平成6年道路審議会答申)
道路政策変更への提言(平成9年 道路審議会県議)
車社会はどう変わるか 国際交通安全学会
交通研究懇談会におけるヒアリング−これからの道路交通について−
太田 勝敏 氏
越 正毅 氏
矢代 隆義 氏
現代用語の基礎知識(2001年) 自由国民社
わたしの考える21世紀のクルマ社会(交通工学研究会)新谷 洋二
交通心理学 宇留野 藤雄
日本自動車産業史 日本自動車工業会
文明にとって車とは トヨタ自動車株式会社編
高速道路と自動車(高速道路調査会) 所載記事
交通工学(交通工学研究会) 所載記事
URL=http://www.taikasha.com/doko/chapt51.htm