Author: Yasuaki Kobashi(小橋康章), All Rights Reserved


創造性研究私的用語集


小橋康章


アウトライン・プロセッサ (outline processor)
文書をテクストの節,項などの単位が階層的に組織されたものと見なし,文書のあらすじ(アウトライン)を計画したり,階層構造を活かしつつテクストをみとおしよく表示したり,並べ換えたり,書換え換えたりすることを支援するコンピュータプログラム.近年,ワードプロセッサ,エディタなど文書作成用のプログラムの一機能として取り込まれることも多くなった.
意思決定支援 (decision aiding, decision support)
意思決定という行為をよりよく営むため,それに働きかける様々な行為.あるいはそのような行為を体現するもの.
グループウェア (groupware)
コンピュータを中心にしたシステムで,複数のユーザの協同作業を支援する仕組み.具体的にはチームのメンバーのスケジュールや,彼らが利用する会議室などの資源の管理,メンバー間の連絡その他のコミュニケーション,情報の共有,チームとしてのルールの遵守,集団での意思決定などの一部または全部を支援するシステムをいう.電子メールのシステムなどもグループウェアの一例,あるいは構成要素と考えることができる.「郡元」のようにKJ法の実施支援を主な機能とするものもある.
KJ法 (KJ method)
 KJ法は大量かつ多様な質的データを総合的に把握する過程で新しいアイデアを得ようとする技法である.考える人とデータの間にあって,人の感性の働きやすい構造を提供することがKJ法の機能である.創始者川喜田二郎のイニシャルからKJ法と命名され,独自の創造性理論に支えられている. 
収束的思考 (convergent thinking)
ギルフォードの用語で,与えられた条件から唯一の正解を導き出す思考を指す.
様々な可能な解を生成する発散的思考と対をなす.
集中的思考(拡散的思考と対)とも.
創造性 (creativity)
creative(創造的)という形容詞の名詞化が「創造性(creativity)」である.そして,creativeとは創造する(to create)行為の結果であるとか,その行為に類似しているという性質を示している.創造するというのは意志をもって無から有を産み出すこと,今まで無かった新しいもの(生物,物体,現象,思想など)を作り出すことである.昔はこのようなことを実現できるのは神だけだと考えられていたようだが,現在では人間の重要な仕事であると信じられている.
創造的認知 (creative cognition)
Finke ほかが提唱する創造性研究への認知心理学的アプローチ.その立場は1992年刊の「創造的認知」に表明されている.簡単な解説「創造的認知と発想支援」ウェブサイト
創発 (emergence)
明示的な指示なく,要素の間やシステムと環境の間の比較的単純な相互作用の中から,一見複雑な行動やパターンが発生すること.[参照]
知識獲得支援ツール (knowledge acquisition support tools)
エクスパートシステムを構築することを目的に,問題領域の専門家から知識を抽出し,文書化(データ化,プログラム化)し,評価,改善するプロセスを支援するコンピュータプログラム.
ノミナルグループ手法 (nominal group technique)
デルベックとファン・デン・フェンの2人が開発したグループ討議の方法で,ブレインストーミングの改良型と考えることもできる.5つのステップから成る:初期の思考,発表,アイデアの再構成,ディスカッションとアイデアの合成,まとめ.
ハイパーメディア (hypermedia)
テクストや動画,写真,図,音声などを組み合わせたマルチメディア的な文書を提供したり,そうした文書の閲覧を支援する仕組み.文書のなかの語などの要素から別の要素(例えば図)に連想リンクを張って,読者の必要に応じた情報の検索を許している点ではデータベースの一種とも言え,そうした要素がコンピュータネットワークを介して遠隔地のコンピュータ上に存在していてもかまわないという点では,コンピュータネットワークのインタフェースとも言える.
発散的思考 (divergent thinking)
ギルフォードの用語で,与えられた条件から唯一の正解を導き出す収束的思考と対照的に,様々な可能な解を生成する思考.
拡散的思考(集中的思考と対)とも.
発想技法(idea generation technique)
考えるという行為をより創造的にするてだてをルールとして体系的に 記述し学びやすくしたもの.
発想支援 (idea generation support)
考えるという行為をより創造的にする試み.
発想支援システム (idea generation support system)
発想技法を物理的に体現した道具.典型的にはコンピュータを中心に 実現される.
ブレインストーミング (brainstorming)
1940年代からオズボーンが開発した,アイデアの生成の段階とアイデアの批判的評価の段階とを明確に分離した会議の方法.「判断保留」を最も重要な原則とす. 
レパートリー・グリッド法 (repertory grid technique)
米国の臨床心理学者ケリー(Kelly, G.A.)によって1950年代に創始された個人的構成体心理学(Kelly, 1955)において,個人はあたかも科学者のようにそれぞれ世界についてのモデルを構成し,それによって現在や過去を記述したり,未来を予期しているとされる.そのモデルの要素が個人的構成体(personal constructs)であり,他人の個人的構成体を知るための方法として考案されたのが,レパートリー・グリッド法(repertory grid technique)である.グリッド法,RGTなどと略称されることも多い. 
ワラスの4段階説 (Wallas' formula for the art of thought)
Graham Wallas (1858-1932).はイギリスの政治学者,社会学者.

The art of thought (Harcourt, Brace, and the World, 1926) で創造のプロセスを4段階に分けた. 
(1)準備:創造への欲求が生じた後,必要な情報を集め技術を習得しておく,
(2)あたため:(孵化期とも)考えが熟して自然に出てくるのを待つ,
(3)ひらめき:(啓示期とも)何かの拍子にアイデアが生まれる,
(4)検証:アイデアを評価し,修正する.

ジェームズ・W・ヤングは「アイデアのつくり方」(今井茂雄訳,TBSブリタニカ,1988)の中で,(1)の段階を資料集めの段階と,心の中でその資料に手を加える(ここではカードを使ったりもする)の段階に分けた5段階を提案している.
A・F・オズボーンは“Applied imagination”(1953)の中で,(1)見当づけ,(2)準備期,(3)分析期,(4)着想期,(5)孵化期,(6)統合期,(7)評価期の7の段階を提案している.

ワラスはウォラス,ウァラス,ワルラスと書かれていることもある.一般均衡理論の創始者のレオン・ワルラスとは別人.

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Date : 13 March 2008 (updated); 10 April 2007 (moved to this site); 18 March 2004 (last modified); 7 April 2000 (created) URL=http://www.taikasha.com/kobashi/ccig/cwords.htm